『子どもの死を祈る親たち』の著書が絶縁を勧める理由


 

子供の死を祈る親たち(新潮文庫)衝撃的な題名ですね。(リンクはAmazonさんに飛びます。以下少し引用します。)今回はこの本のご紹介です。

著者の押川剛さんは、病気の自覚のない人を医療に繋げる仕事をしています。つまりひきこもりなどで問題があるのに病院に行こうとしない人を「何とか連れていく」仕事です。

 

こう書いただけで大変な仕事だと察することができます。ひきこもり、自室で用を足す子ども、親を殺そうとする子ども、覚醒剤にハマって借金してしまう子ども、などなど。壮絶な事例の中で「一見」、子どもが酷いことをして親を困らせているようにみえますが、実は親の育て方に原因があると著者は語っています。本書の事例を読めば「育児でやってはいけないこと」がみえてきます。

 

また、押川さんは依頼は親からされるものの、どちらかというと子どものほうに寄り添って守っているようにみえました。引きこもりや覚醒剤など、子どもがそうしたくてなったわけではなく、必ず親子関係に要因があるはずと訴えているからです。

 

例えば反抗期がなかった子どもに対して、それは性格ではなくて、家庭環境に要因があると述べています。

『つまり「反抗期がなかった」子供は、それすらも許されないほど親に抑圧されて育ってきたか、自己主張ができないほど、家庭内に不安があったか(たとえば、両親が不仲で「自分がしっかりしなければ」と我慢していたなど)といったことが考えられます。

 

このような家庭の親(とくに母親)が犯しがちな過ちは、子供の前でやたらと弱々しく振舞ってしまうことです。子供が何か意に沿わないことをしたり、問題行動を起こしたりしたときに、子供の前でさめざめと泣いたり、寝込んでみせたりするのです。これが繰り返されると子供は、「お母さんを悲しませてはいけない」と、自らの感情に蓋をするようになります。(p353)』

 


真の自立とは「家族と縁を切ること」

 

そして、子どもの真の自立とは、絶縁にあるとも言及しています。私たち毒親育ち、毒親から逃れた人にはとても励まされるお言葉です。

 

『 私はこれまでに、たくさんの若者の自立に携わってきた。今、「真の自立とは何か」と問われれば、「家族と縁を切ること」と答える。血を断ち切る哀しみ、そこで感じる孤独。その身を切られるような痛みこそが、人を一人の人間たらしめるのだと、改めて思う。(p66)』

 

そして、絶縁を勧める理由を以下のように述べています。

 

『親子が一緒にいることで壊れてしまった家族を、私はたくさん見てきました。親子間が殺し合いになるくらいなら、あるいは心が壊れてしまうくらいなら、親が子を捨てる、子が親を捨てる、そういう選択があってもいいと思います。また、そうせざるを得ない人々の意思を、尊重したいとも思います(p364)』

 

究極的には親と子は別々に生きる方が精神衛生上よいのではないか、現代の「べったり家族愛」のほうが異常なのではないのか。その考えは間違いではないなと思わせてくださいました。勇気が湧きます。

また同時に、親子関係は密室で繰り広げられることなので、細心の注意を払わないといけないなと心を引き締めた一冊でした。

 

読んでくださりありがとうございました。

本のご紹介(Amazonさんへのリンク)

子供の死を祈る親たち(新潮文庫)